「完全復帰は難しいでしょう」
交通事故から3ヶ月後、主治医からの言葉が病室に重く響きました。37歳。システムエンジニアとして第一線で働いていた私の人生は、一瞬の出来事で大きく変わりました。
下半身の感覚が鈍く、右足は常に痛みを伴う。医師からは「車椅子での生活を視野に入れて」と告げられ、なんとか松葉杖で歩けても、長時間の立ち仕事は無理だと。
退院後、真っ先に会社を訪れました。「在宅でなら仕事を」と頼み込みましたが、結論は「NO」。システム開発の現場に戻れないなら、戦力にはならないと。12年間働いた会社との別れは、事務的な退職手続きで終わりました。
妻は「元の生活に戻れなくても、新しい道を見つければいい」と励ましてくれる。でも、自分では何もできないという無力感と、これから先への不安で押しつぶされそうでした。
転機は、リハビリ仲間から誘われた温泉旅行でした。
「車椅子でも行ける温泉ありますよ」
半信半疑で訪れた旅館。確かにバリアフリー対応はされているものの、あちこちに「ここさえ改善すれば」という点が目につきました。段差の工夫、浴室の手すりの位置、食事処の導線…。SEとしての経験が、自然と改善点の分析に向かっていたんです。
その夜、同室の先輩から言われました。
「久保田さんさぁ、その視点って武器になるんじゃない?」
帰宅後、ネットで「バリアフリー」「観光」というキーワードを探っているとき、堂本晃聖さんのブログに出会いました。事故や病気を経験した人たちが、その経験を活かして新しいキャリアを築いていく事例の数々。
すぐに無料相談を申し込みました。
「あなたには、健常者には絶対に持てない”視点”があります。それは、バリアフリー観光を本質的に変える可能性を秘めています」
堂本さんとの面談で、漠然としていた想いが、少しずつ形になっていきました。
TherActionのプログラムでは、自分の「強み」を徹底的に掘り下げました。
- SEとしてのシステム分析力
- 車椅子利用者としての当事者目線
- 旅行が好きだった自分の感性
これらを組み合わせることで、バリアフリー観光の新しいコンサルティングモデルが見えてきたのです。
最初の仕事は、地元の小さな旅館の改善提案でした。「お客様目線のレポート」として、車椅子での実地調査と改善案をまとめ、経営者に提出。具体的な数値とコストを示しながら、実現可能な改善策を提案しました。
「こんな視点は今まで気づかなかった」
「これなら、すぐにでも取り組める」
経営者の反応は予想以上に良く、口コミで依頼が増えていきました。
今では月に2-3件のコンサルティング案件を手がけ、全国のホテルや観光施設にアドバイスを提供しています。車椅子の方だけでなく、高齢者、ベビーカー利用者、内部障害の方など、様々な方々の「旅の障壁」を取り除くお手伝いができています。
去年からは自治体の観光課とも協力し、「ユニバーサルツーリズム推進プロジェクト」を展開。バリアフリーマップの作成や、観光業者向けの研修プログラムも実施しています。
事故から3年。
確かに、以前のように走ることはできません。
でも、車椅子だからこそ見える景色があり、伝えられる価値があると気づきました。
妻が言った「新しい道」は、思いがけない形で見つかったのかもしれません。
「不便」は、誰かの「便利」につながる。
その確信が、今の私の原動力です。
【プロジェクト実績】
・宿泊施設コンサルティング:47件
・観光施設改善提案:28件
・自治体連携プロジェクト:4件
・バリアフリー研修実施:250名以上
・ユーザーレビュー投稿数:1,200件以上
堂本晃聖からのメッセージ
久保田さんの生き方には、心から敬服しています。
「障害」を「特別な視点」に転換し、社会の課題を解決するビジネスへと昇華させた。それは、私がTherActionで目指している「過去の痛みを力に変える」という理念を、最も見事な形で体現してくれた例だと感じています。
私自身、大病との闘いを経験し、「もう終わりかもしれない」と思った時期がありました。だからこそ、久保田さんが交通事故という人生の危機を乗り越え、むしろその経験を「武器」として新しい道を切り開かれたことに、大きな感銘を受けています。
特に印象的なのは、技術者としての分析力と、当事者としての実体験を組み合わせた独自のアプローチです。誰にでもできることではありません。それは、久保田さんだからこそ見出せた、唯一無二の価値だと思います。
これからのバリアフリー社会を考える上で、久保田さんのような「現場を知る専門家」の存在は、ますます重要になっていくでしょう。その先駆者として、多くの人々に希望を与え続けてくれることを、心から期待しています。
【無料相談受付中】
あなたの経験も、必ず誰かの力になります。その可能性を、TherActionで一緒に見つけてみませんか?