竹内良介(35歳・男性)AIベンチャー創業者
「上場目前で見た地獄。30億円調達したスタートアップ創業者の告白」
2年で従業員150名、時価総額100億円。時代の寵児ともてはやされたAIベンチャーの舞台裏で、私は音を立てて崩れ落ちていました。急成長のプレッシャー、終わりの見えない奔走。ある日突然、心と体が悲鳴を上げ始めたのです。眠れない夜、止まらない焦燥感。気づけば心療内科の扉を叩き、大量の薬に頼る日々。
そんな私をさらに追い詰めたのは、信じていた仲間たちの離反でした。創業メンバーとの亀裂は深く、ついにはCTOが競合を設立、COOからは株主代表訴訟を示唆される始末。優秀な若手社員も次々と去っていき、オフィスは虚無感に包まれていました。IPOは延期となり、VCからの容赦ない要求が突き刺さります。
【奈落の底で見た悪夢】
- 月に1.5億円が消えていく絶望的な赤字
- 止まらないエンジニアの離職(離職率40%超)
- 崩壊した創業メンバーとの絆
- CTOの裏切り:競合他社を設立
- COOの恫喝:株主代表訴訟を示唆
- 淀んだ空気:社員のモチベーションは地に落ち、ストックオプションは紙切れ同然
- VCからの宣告:「経営から退いてもらうしかない」
藁にもすがる思いで、かつての同志に相談しました。そこで紹介されたのが、同じように事業の崩壊を経験し、見事に再建を果たしたTherAction創始者の堂本さんでした。
初めての相談で、堂本さんの言葉は私の胸に深く突き刺さりました。「竹内さん、急成長は麻薬と同じです。会社を大きくしますが、創業者の心を蝕むこともある。でも、どん底を見た人間は強い。真の経営者になれるチャンスでもあるんです」
【Phase 1:破壊からの再生 – 自分自身を取り戻す】
堂本さんの言葉を胸に、私はまず自分自身の立て直しから始めました。紹介してもらった専門医とのカウンセリングで、心の奥底に溜まっていた膿を吐き出しました。睡眠改善プログラムにも取り組み、少しずつ眠れる時間を取り戻していきます。
そして、狂ったように働いていた日々を見直しました。CEOとしての業務を大幅に削減し、意識的に休養とリハビリの時間を確保するように努めました。立ち止まって見つめ直したのは、なぜこの会社を始めたのかという原点。事業ビジョンを再構築し、社員にとってのコアバリューを改めて定義し直しました。
【Phase 2:信頼回復への道 – バラバラになった組織を繋ぎ直す】
次に着手したのは、組織の立て直しです。外部からの視点を取り入れるため、社外取締役を2名招聘。これまで私に集中していた権限を大胆に委譲し、決裁基準の80%を現場に移譲しました。
組織の風通しを良くするため、全社集会を毎週開催し、会社の状況、良いことも悪いことも全て社員に共有しました。重要な経営指標も全てオープンにし、透明性の高い組織文化を築くことを目指しました。
同時に、社員の不満の根源だった報酬制度にもメスを入れました。ストックオプションの条件を大幅に見直し、短期的な成果も反映される四半期業績連動賞与を導入。社員の頑張りに報いる仕組みを作りました。
【Phase 3:再起への狼煙 – 選択と集中による事業再構築】
組織の足場を固めた後、いよいよ事業の再構築に着手しました。不採算だった3つの事業を思い切って売却。10億円の現金を手にし、経営資源をコア事業に集中させる決断をしました。
資金調達も多様化しました。VCだけに頼るのではなく、デットファイナンスで15億円を調達。さらに、事業シナジーが見込める企業との提携により20億円の資金を確保しました。
採用戦略も大きく転換しました。即戦力となる経験者採用から、ポテンシャルを重視した採用へシフト。
未来への投資として、人材育成予算を3倍に増額しました。
【劇的な変化 – どん底からのV字回復】
あれから1年。私たちの会社は、見違えるように変わりました。
数字が示す奇跡
- 月間赤字1.5億円 → 黒字化達成!
- 営業利益率 -50% → +15%へ
- 時価総額 評価額が1.5倍に上昇
組織の再生
- 離職率 40% → 驚異の8%に改善
- 従業員満足度 35% → 85%へ大幅アップ
- 新規採用 優秀な人材が20名参画
そして、私自身
- 睡眠時間 3時間 → 夢を見れる6時間へ
- 経営会議 週40時間 → 効率的な15時間へ
- 休暇取得 ゼロ → 月4日を確保できる余裕
何よりも大きかったのは、一度は崩壊した創業メンバーとの関係修復でした。腹を割って徹底的に話し合い、お互いの想いを理解し合った結果、なんと2名が再び経営チームに戻ってきてくれたのです。
彼らの復帰は、社内の雰囲気を一変させ、社員たちのモチベーションを大きく向上させました。
先日、あるVCから電話がありました。
「竹内さんのV字回復は、まさに奇跡だ。ぜひ、次のラウンドの主幹事をやらせてほしい」と。
今、過去の私と同じように苦しんでいるスタートアップの経営者の皆さんへ伝えたい。急成長の先に待っているのは、成功だけではありません。時には、想像を絶する苦難が待ち受けていることもあります。
しかし、一度壊れかけた組織は、必ずより強靭に生まれ変われる。堂本さんとの出会いが、私にそれを教えてくれました。
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