あの頃の自分が救われていたら——裏社会経験から見る更生支援の可能性

「しょせん人殺しても少年Aや!」

12歳の私のその言葉には、どこか居直りと自暴自棄が混ざっていました。

今、その言葉を思い出すたび、当時の私たちに必要だった支援が見えてきます。

目次

なぜ、少年は”犯罪”に向かうのか

私と”兄弟”たちは、夜な夜な集まっては、
「今日は何を盗る?」「誰にケンカ売る?」と相談していました。

その背景には:

  1. 居場所の喪失
  • 家庭に帰れない
  • 学校にも馴染めない
  • 社会からの疎外感
  1. 承認欲求の歪み
  • 暴力による”強さ”の誇示
  • 犯罪による金銭的”成功”
  • 仲間内での”絆”の確認
  1. 未来への絶望
  • 「どうせ俺なんか」という諦め
  • 社会的スキルの欠如
  • 正しい判断基準の喪失

現行の更生プログラムの限界

  1. 表面的な指導に留まりがち
  • 「悪いことはするな」の繰り返し
  • 内面の痛みへの理解不足
  • 形式的な反省文の強要
  1. 現実的な出口戦略の不足
  • 就労支援が不十分
  • 所属コミュニティの欠如
  • 生活スキルの教育不足
  1. アフターケアの不備
  • フォローアップの期間が短い
  • 相談窓口が限られている
  • 緊急時の受け皿不足

TherAction的アプローチの提案

1. 心の癒しと行動変容の統合

  • トラウマケアと具体的スキル獲得を同時進行
  • 段階的な目標設定と成功体験の積み重ね
  • 自己肯定感の回復と社会適応の両立

2. コミュニティの再構築

  • 健全な仲間関係の形成
  • 役割と責任の段階的付与
  • 所属意識の健全な育成

3. 実践的な自立支援

  • 職業訓練と心理的サポートの連携
  • 生活設計のメンタリング
  • 緊急時の駆け込み寺的機能

具体的な支援モデル案

Phase 1:受け入れと理解(1-2ヶ月)

  • 徹底的な傾聴と受容
  • 安全な居場所の提供
  • 基本的信頼関係の構築

Phase 2:自己発見(2-3ヶ月)

  • 強みと可能性の発見
  • 健全な価値観の再構築
  • 将来の夢や目標の設定

Phase 3:スキル獲得(3-6ヶ月)

  • 社会的スキルのトレーニング
  • 職業訓練や資格取得
  • 金銭管理などの生活スキル

Phase 4:社会復帰(6ヶ月-1年)

  • 段階的な就労支援
  • 地域社会との関係構築
  • 継続的なフォローアップ

私たちにできること

1. 支援者側の意識改革

  • 「更生」ではなく「成長支援」という視点
  • 過去の行為と人格の切り離し
  • 可能性を信じる姿勢

2. 社会システムの整備

  • 継続的な支援体制の確立
  • 緊急避難先の確保
  • 就労機会の創出

3. 地域社会の理解促進

  • 偏見の払拭
  • 受け入れ態勢の強化
  • 再チャンスの提供

希望はある

私の”兄弟”たちは、最後に悲惨な最期を迎えました。
でも、それは決して避けられない運命ではなかったはずです。

適切な支援があれば、
理解ある大人との出会いがあれば、
健全なコミュニティへの所属があれば——。

彼らの人生は、違う道を選べたかもしれません。

だからこそ今、次の世代には、
より良い選択肢を。
より確かな希望を。
より温かい支援を。

それが、生き残った私の使命だと感じています。


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次回は「TherActionが目指す社会貢献」について。
個人の変化から社会変革へ。その展望をお話しします。

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