「おかんに捨てられたんやろ?」
施設に入った直後、周りの子どもたちからそう言われた記憶が、今でも鮮明に残っています。
子どもたちの中にさえ、「施設の子=親に捨てられた子」という偏見があったのです。
でも、本当にそうなのでしょうか?
児童養護施設の現実
入所理由の内訳(2023年度統計より)
- 虐待:45.5%
- 親の精神疾患:12.3%
- 経済的困窮:10.2%
- 養育放棄:8.7%
- その他:23.3%
つまり、”捨てられた”わけではない子どもたちが大半なのです。
むしろ、様々な社会的要因や家庭の事情が複雑に絡み合って、施設での生活を余儀なくされているケースがほとんど。
施設が直面している3つの深刻な課題
1. 職員体制の不足
私が体験した夜の孤独。あの2段ベッドで一人泣いていた時間。
実は、夜間の職員配置基準が
「子ども20人に対して職員1人」
という驚くべき状況から生まれていたのです。
一人の職員がどれだけ頑張っても、20人の子どもの心のケアまで手が回らない。
それは制度上の限界であり、職員の方々の責任ではありません。
2. 退所後のサポート不足
18歳で施設を出た後、多くの子どもたちは:
- 住む場所の確保
- 就職先の確保
- 生活費の工面
すべてを一人で担わなければなりません。
私の場合は”兄弟”たちという支えがありましたが、それは偶然の産物。
制度としての受け皿がないというのが現状です。
3. 根強い社会の偏見
就職や結婚の際に直面する差別。
「施設出身です」と言えない重い空気。
それは単なる偏見であり、子どもたち自身には何の責任もないのです。
私たちにできること

1. 制度面での改革提案
- 職員配置基準の見直し(10人に1人へ)
- 退所後の住居支援制度の確立
- 進学・就職支援の充実
- 心理カウンセラーの常駐化
2. 社会の意識改革
- 「施設の子=特別」という偏見の払拭
- 多様な家族形態の一つとして認識
- 支援制度の充実を求める世論形成
3. 具体的なアクション
- 施設でのボランティア活動
- 退所者の就職受け入れ
- 里親制度への参加検討
- 関連NPOへの支援
終わりに:希望はある
私自身、施設で育った後、様々な紆余曲折を経て、今このように発信できる立場になりました。
それは決して「努力すれば報われる」という安易な成功譚ではありません。
むしろ、社会全体で支える仕組みづくりの必要性を強く感じているからこそ、声を上げ続けているのです。
施設で生活する子どもたちは決して”普通じゃない”子どもたちではありません。
ただ、一時的に家族との生活が難しくなった子どもたちなのです。
その子たちが健やかに育ち、自分らしい未来を選択できる社会。
それは決して夢物語ではないはずです。
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次回は「児童虐待のサイン〜見過ごさないために」について。
私自身の経験も交えながら、早期発見・介入の重要性についてお話しします。