DVサバイバーから、今度は人を支える側へ。藤田さんの再生物語

今日は、重たい内容を含むストーリーになりますが、必ず光は見えるということを、藤田さん(42歳・女性/仮名)の物語を通してお伝えしたいと思います。

目次

初めて会ったとき

「私、生きていていいのかな…」

藤田さんが初めて相談に来られた時、その目は完全に死んでいました。全身が震え、椅子に座ることさえ困難な様子。

10年に及ぶDVから逃れ、シェルターを経て、ようやくTherActionにたどり着いた時の藤田さんは、自分が「生きる価値のない人間」だと心から信じ込んでいました。

私には痛いほど分かります。母親から「おのれなんど死んだらええんじゃ!」と言われ続けた日々。人は、大切な人から否定され続けると、本当に自分の存在価値を見失ってしまうんです。

深い傷

藤田さんの抱える傷は、あまりにも深いものでした:

  • 夫からの身体的暴力
  • 言葉による人格否定
  • 金銭的な支配
  • 子どもとの面会制限
  • 親族からの二次被害

特に辛かったのは、実家からの「あなたに非があるんでしょ」という言葉。逃げ場を失った藤田さんは、ますます追い詰められていきました。

私は思わず、自分が50億円の借金を背負い、誰にも相談できずに追い詰められていった日々を思い出していました。人は追い詰められると、「自分が悪いんだ」と思い込んでしまう。そして、その思い込みが、さらなる孤立を生むんです。

TherActionでの再生の歩み

Healフェーズ(3ヶ月)

最初の課題は、藤田さんの「安全」を確保することでした。

DVの影響で、ドアの開閉音だけでパニック発作を起こしてしまう。エレベーターで男性と二人きりになれない。そんな状態からのスタートでした。

私たちが最初に取り組んだのは「今、ここ」での安全確認です:

  • セッションルームの出入り口の確認
  • 緊急連絡先の共有
  • 安全な場所のイメージワーク
  • 呼吸法と接地感覚のトレーニング

印象的だったのは、EFTセッションの3回目。
「今日は、久しぶりに眠れました…」
と、少し潤んだ目で教えてくれた時。小さな、でも確かな変化の兆しでした。

大きな転機

Healフェーズも2ヶ月が過ぎた頃、思いがけない出来事がありました。

「このあいだ、シェルターの若い女性に、呼吸法を教えたんです」

藤田さんの目に、初めて光が宿っているのを感じました。

「その人が、『楽になった』って。私も、誰かの役に立てるんだって…」

私は思わず、自分が大病から回復し、はじめてカウンセリングを学び始めた時のことを思い出していました。「誰かの役に立ちたい」という思いは、人を再生させる大きな力を持っています。

Discoverフェーズ(3ヶ月)

ここから、藤田さんの「新しい人生」を一緒に探っていきました。

  • カウンセラー養成講座の情報収集
  • DV被害者支援の勉強会への参加
  • 同じ経験を持つ仲間との交流会

特に印象的だったのは、藤田さんが支援団体でボランティアを始めた時の変化です。

「私の経験が、誰かの希望になるなら…。それって、すごく意味があることですよね」

その言葉に、私は深くうなずきました。どんな苦しい経験も、誰かを助けるための”力”に変えられる。それこそが、TherActionが大切にしている考え方だからです。

Actフェーズ(現在進行中)

現在、藤田さんは着実に歩みを進めています:

  • カウンセラーの資格取得に向けた学習
  • DVサポートグループでのファシリテーター
  • 被害者支援のための講演活動

先日、小規模な講演会で話をした際には、3名の参加者から「希望が持てた」という感想をもらったそうです。

現在の藤田さん

藤田さんは今、DVの被害者支援に特化したカウンセラーを目指して、着実に歩みを進めています。

「堂本さん、私ね、『生きていていいのかな』って悩んでた時の自分に、今なら言えるんです。『あなたには価値がある。そして、その痛みは、きっと誰かの光になる』って」

この物語から学べること

藤田さんの再生の過程で、重要だったのは:

  1. 安全な環境の確保
  2. 小さな変化の積み重ね
  3. 「誰かの役に立ちたい」という願い
  4. 傷を”力”に変えるという視点

あなたへのメッセージ

今、深い闇の中にいるあなた。
「もう無理」と感じているあなた。

どうか、希望を捨てないでください。

藤田さんのように、その痛みを誰かの光に変えられる日が、必ず来ます。

そのために、まずは安全な場所で、あなたのお話を聴かせてください。

きっと、道は開けるはずです。

【次回予告】「中村さん(35歳男性)- 事業継承の悩みを克服し、新規事業で成功」

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