スターバックスが生み出す“マグネティックコンセプト”

2025年2月23日

――コーヒーを超えた「サードプレイス」のつくり方

“コーヒーを飲む場所”としてはもちろん、仕事や勉強、時には仲間との集まりなど、さまざまなシーンで利用されるスターバックス。よく見ると、その裏には「マグネティックコンセプト」と呼ばれる要素が潜んでいることに気づきます。なぜスターバックスはコーヒー以外の新たな価値観を生み出せたのか。その“磁力”の源泉を、少し覗いてみませんか。

1. “サードプレイス”という世界観にこめられた思い

スターバックスが大切にしている言葉の一つに、「サードプレイス」があります。自宅（ファーストプレイス）や職場・学校（セカンドプレイス）以外の、心地よく過ごせる第三の居場所。

コーヒーが主役とはいえ、それ以上に「人々が集まるための空間」をつくることが根本にあるのです。
明るく清潔な店内、落ち着いた照明・BGMなど、“おもてなし”だけでは語り切れない世界観の演出が「ここに来るとホッとする」という感覚を生むといえるでしょう。

こうした場所づくりへのこだわりが、“マグネティックコンセプト”の最初の鍵。おいしいコーヒーを提供するだけでなく、“ここにいる時間”そのものに価値を見いだすという発想が、多くの人を引き寄せているのかもしれません。

2. 「高めの価格設定」でも支持される理由

スターバックスのドリンクは、一般的な喫茶店やチェーン店と比べるとやや高めに感じる場合があります。
それでも世界中で支持を集めるのは、「値段以上の体験」があるからではないでしょうか。

バリスタの接客
名前を呼んでオーダーを確認し、要望に応じてカスタマイズを提案してくれる。人によっては“一対一のおもてなし”と感じられるかもしれません。
店舗全体の雰囲気
Wi-Fiや電源の利用など、カフェ利用を超えた利便性も含め、「ここに来たら落ち着いて自分の時間を過ごせる」という満足感が得られます。

どこへ行っても共通して“スターバックスらしい体験”ができる。この一貫した品質と空気感が、人々の心を掴む“磁力”として働いているようです。

3. “季節限定”や“新フレーバー”がつむぐ、新鮮さの提供

スターバックスは「エスプレッソ」「カフェラテ」などの定番商品が中心ですが、一方で期間限定ビバレッジや店舗限定フレーバーも定期的に登場します。

SNSで話題になるフェア商品
「今年もあのいちご味が出るらしい」「抹茶とチョコの限定フラペチーノが気になる」――こうした噂や写真がSNSで拡散され、飲んでみたい気持ちをくすぐります。
ローカル要素の取り入れ
海外のスターバックスでは、その土地特有の食材や文化を反映した限定メニューが存在します。旅行先でも「現地限定」を求めてスタバを巡るファンがいるほどです。

定番の心地良さと、常に新しいトライを織り交ぜる。このバランスがリピーターを飽きさせず、“もう一度行ってみよう”と思わせる“マグネティックコンセプト”の要素と言えるでしょう。

4. バリスタやスタッフを巻き込んだ企業文化づくり

スターバックスでは、社員やバリスタを「パートナー」と呼び、研修やコミュニケーションの取り方に独自の哲学があります。

「ポジティブな人間関係」から生まれる接客
スタッフ同士が前向きに働ける環境を整えることで、店舗の雰囲気やお客様対応に自然とあたたかさが滲み出ます。
共感を大切にする社風
お客様の好みや利用シーンに合ったドリンクを提案したり、メッセージをカップに書き添えたりする心くばりは、まさに“あなたのことを考えていますよ”という気持ちの現れ。そのちょっとした行為が「自分にとって特別な場所」という愛着を育てるのです。

言葉やマニュアルだけでなく、実際の行動を通じて“スターバックスらしさ”を体現している。この組織文化こそが、マグネティックコンセプトを支える土台にもなっているのでしょう。